PDF は Portable Document Format の略です。Adobe が開発したのは、文書がどのコンピューターやどのプリンターでも、読み手がそのフォントを持っているかどうかに関わらず、作成者の意図したとおりの見た目で届くようにするためでした。この約束が、PDF が契約書、請求書、マニュアル、フォーム、チケット、論文などの標準的な形式になった理由です。2008 年に Adobe は仕様を国際標準化機構 (ISO) に引き渡し、PDF は特定企業の形式ではなくオープン標準になりました。
PDFがページを保存する仕組み
PDF はページの画像でもワープロ文書でもありません。番号付きのオブジェクト(ページ、フォント、画像、色の定義、注釈など)の集合と、それぞれのオブジェクトがファイル内のどこから始まるかを記録した、ファイル末尾のテーブルで構成されています。ページオブジェクトには描画命令の一覧が入っており、「このグリフをこの座標に配置する」「この長方形をこの色で塗る」「この枠にこの画像を配置する」といった指示が書かれています。
命令がピクセル単位ではなく幾何学的に記述されているため、PDF 内のテキストはどの倍率でもくっきり表示され、多くの場合は選択や検索ができます。例外はスキャンされた PDF で、これは紙を撮影した写真をページオブジェクトに埋め込んだものです。光学式文字認識をかけるまでは、内部にテキストは一切存在しません。
フォントは通常埋め込みされます。これは、書体のコピーがファイル内に含まれて一緒に移動するという意味です。そのおかげで、そのフォントを一度も使ったことのないコンピューターでもレイアウトが崩れませんが、1 ページだけの手紙の PDF でも数メガバイトになる場合がある理由でもあります。PDF はオブジェクトごとに個別圧縮でき、PDF 1.5 以降では複数の小さなオブジェクトを 1 つの圧縮ストリームにまとめて格納できます。このため、内容が同じ 2 つのファイルでもサイズが大きく異なることがあります。
PDFが保持するメタデータ
PDF には、一般的な想像以上に多くのメタデータが、同時に 2 か所に保存されています。
1 つ目は文書情報辞書で、リーダーのドキュメントプロパティに表示されるおなじみのフィールド群です。Title、Author、Subject、Keywords、Creator(文書を作成したアプリ)と、実際に PDF を書き出したソフトウェアである Producer が並びます。その横には CreationDate と ModifyDate があり、通常は D:20240418103122+02'00' のような形式で記録され、時刻だけでなくタイムゾーンも含みます。
2 つ目はXMPで、Adobe の XML ベースのメタデータパケットです。XMP には同じフィールドを構造化された形で繰り返し記録でき、PDF/A への準拠レベル、編集を経ても残る永続的な文書 ID、どのアプリがいつ触れたかといった履歴などを宣言します。
共有前に確認しておきたいフィールドが 2 つあります。Author は、そのコンピューターにサインインしていたユーザーのアカウント名から自動入力されることが多く、Producer にはソフトウェア名とそのバージョンまで記録されます。スマホやカメラのアプリから書き出した PDF は、内部の画像からメタデータを受け継いでいる場合もあります。いずれもページ上からは見えません。
PDF の構造自体も文書について多くを伝えます。どの機能が使えるかをリーダーに知らせるPDF バージョン、ページ数、ポイント単位のページサイズ、ページの回転、スクリーンリーダー向けのタグ付けがあるかどうか、暗号化やデジタル署名が行われているかどうかなどです。
PDFを使用するタイミング
レイアウトが重要で、内容が完成している文書には PDF を使いましょう。印刷、署名、保管が必要なものや、専用ソフトのインストールを依頼できない相手が読む文書には適した形式です。
執筆中の文書には PDF は向きません。PDF の編集は扱いにくく(段落を組み替えるのではなく、ページ上のオブジェクトを動かす作業になります)、編集可能な元データはワープロ形式で保持し、最後に PDF に書き出すのがよいでしょう。また、PDF はページサイズが固定のため画面幅に合わせて組み直せず、スマホでは読みづらくなります。ebook 形式ならこの点をはるかにうまく処理できます。長期保存には、通常の PDF を将来開く際のリスクになり得る機能を意図的に禁止した PDF/A プロファイルが用意されています。