EPS は Encapsulated PostScript の略です。PostScript は、Adobe が印刷ページを記述するために設計したプログラミング言語で、EPS ファイルは 1 つのアートワークを記述する自己完結型の PostScript プログラムです。Encapsulated(カプセル化) とは、そのアートワークが単体で印刷されるのではなく、より大きなドキュメントに配置されることを前提に書かれている、という意味です。およそ 20 年間、ロゴやイラストを印刷所に渡す標準的な形式として使われてきており、現在でも多くのブランドガイドラインで採用されています。
EPS がアートワークを保存する仕組み
EPS の中身はコードです。座標や曲線、塗りや線は、スタックベース言語である PostScript の演算子として表現されます。そのため図形を描くことはデータ構造ではなく命令列になっています。これにより、EPS は本質的に解像度に依存しません。プリンター側のインタープリターが、そのプリンターの解像度でプログラムを実行するためです。
EPS をほかのドキュメント内で扱えるようにするための慣習が 2 つあります。1 つ目は バウンディングボックス で、ファイルの先頭付近にあるコメントとして、アートワークの範囲をポイント単位で宣言します。レイアウトアプリがプログラムを実行せずに、どれだけの領域を確保すべきかを知るための情報です。2 つ目はオプションの低解像度プレビュー画像で、レイアウトアプリが画面上にグレーの四角ではなく、簡易的な見た目を表示できるようにします。
EPS にはラスター画像データを含めることもでき、実際によく含まれています。Photoshop EPS は、PostScript でラップされたピクセル画像です。そのため拡張子だけでは、そのファイルがベクターのアートワークなのか写真なのかを判断できず、これはプリプレス現場で繰り返し起こる混乱の原因になっています。
EPS に含まれるメタデータ
EPS のメタデータはヘッダー部分にあり、Adobe の Document Structuring Conventions で定義された特別な形式のコメントとして記述されています。コメントはパーセント記号 2 つで始まり、ファイルの紹介文のような体裁になっています。
ほぼ必ず見つかるのが、4 つの整数座標を持つ %%BoundingBox、ファイルを生成したアプリとバージョン名を持つ %%Creator、%%Title、%%CreationDate です。プリプレス用のファイルでは、アートワークに必要なすべての書体を列挙する %%DocumentFonts、%%DocumentNeededResources、ファイルの作成先である人物または組織名を示す %%For、そして %%Pages が追加されることがよくあります。2000 年代以降の Adobe 製アプリで生成されたファイルには、ドキュメント ID や編集履歴を格納した XMP パケットが含まれていることも一般的です。
%%DocumentFonts は実務的に重要です。その一覧にあるフォントが出力先で利用できなければ、印刷結果は誤ったものになり、そのリストだけが唯一の警告になります。%%For はファイルを再利用する前に確認すべき項目です。ここにはクライアント名が記載されていることがよくあります。
ヘッダーはプレーンテキストなので、EPS をテキストエディタで開けばこれらの情報をすべて読めます。アートワークが見えない場合でも、メタデータは確認できます。
EPS を使用するタイミング
EPS を使うのは、後工程でそれが求められている場合です。古いプリプレスのワークフロー、印刷所の入稿仕様、常に EPS を含んできたブランドアセット一式などです。こうした制約の中では、EPS はこれまで通り問題なく機能します。
新しく作成する場合は、PDF または SVG を優先してください。PDF は PostScript の直接の後継で、同等の再現性を保ちつつ、どこでも正しくプレビューでき、処理もはるかに安全です。ウェブ上では SVG の方が適しています。EPS には実用的な透明機能がなく、プレビューと実際の印刷結果が食い違うことがあり、信頼できない送信元からの PostScript プログラムを実行するのも安全とは言えません。