ファイル形式

DNG - Adobe デジタルネガ

DNG は Adobe のオープンな RAW 写真フォーマットです。カメラセンサーの生データを、どのプログラムでも現像できるように仕様化し、編集内容とメタデータをファイル内に保存します。

.dng

DNG は Digital Negative の略です。Adobe が公開している、各カメラメーカーが独自に作っている非公開の RAW 形式に対する、オープンで仕様が文書化された代替となる RAW 写真フォーマットです。RAW ファイルはまだ「写真」ではなく、カメラセンサーからほとんど手を加えずに読み取ったデータであり、フィルムのネガを印刷して写真にしたように、ソフトウェアで現像して画像にする必要があります。メーカーごとの RAW 形式は企業秘密なので、ソフトウェア側はカメラの機種ごとに個別対応しなければなりません。DNG はそれを解消するために作られました。一部のカメラやスマートフォン、ドローンは最初から DNG で書き出せますし、Adobe の無償コンバーターを使えば、他社の RAW ファイルを DNG に変換できます。

DNG がデータを保存する仕組み

DNG の中身は TIFF ファイルであり、タグとディレクトリからなる構造も同じです。その中で重要なのはセンサーデータです。カメラのセンサーは色をそのまま見ているわけではなく、赤・緑・青のカラーフィルターが並んだパターンの下に配置されたフォトセンサーの格子で、各位置は 1 色だけを記録します。DNG はこのモザイク状のデータを、通常は 12 / 14 / 16 ビットの精度で、フルカラーのピクセルに補間される前にそのまま保持します。圧縮は標準では可逆圧縮ですが、アーカイブを小さくしたい場合のために非可逆圧縮オプションも用意されています。

DNG には、ビューアが表示できるように、あらかじめ作成された JPEG プレビューも含まれています。また、現像ソフトがそのカメラの色を解釈するために必要な数値、たとえばカラーマトリックス、計測時の光源、黒レベルと白レベル、撮影時のホワイトバランスなども格納されます。これらのキャリブレーション用タグがポイントです。独自の RAW ファイルはソフトウェアがそのカメラをすでに知っていることを前提としますが、DNG は自分自身について説明することで、どのコンバーターでも正しく現像できるようにします。ホワイトバランスやコントラスト、レンズ補正などの設定は、画像に直接適用されるのではなく「指示」として記録されます。そのため RAW 編集は非破壊であり、変更しているのは写真そのものではなく「指示書」のほうというわけです。

DNG に含まれるメタデータ

非常に多くの情報を持ちます。DNG は写真であると同時に作業用ドキュメントでもあるからです。

  • 基本情報のTIFF タグ: Make、Model、Software、DateTime、Artist、Copyright。
  • EXIF (カメラの標準規格): DateTimeOriginal、ExposureTime、FNumber、ISOSpeedRatings、FocalLength、LensModel、さらに多くの場合はボディとレンズのシリアル番号。
  • カメラやペアリングされたスマートフォンが提供した場合の、緯度・経度・高度・UTC タイムスタンプを含むGPS タグ。
  • DNG 固有のタグ: フォーマットのバージョン、一意なカメラモデル名、RAW データの識別子、カメラのシリアル番号、そして OriginalRawFileName (DNG に変換される前の元ファイル名)。これにより、元の .CR2 や .NEF のファイル名とその通し番号が保持されます。
  • XMP: 編集ソフトがタイトル・説明・キーワード・星評価・カラーレーベル・権利表記、さらにトリミングやトーン調整など、人が行った編集内容と現像設定を保存する場所です。XMP は DNG ファイルの内部に埋め込まれるため、これらの編集内容は別ファイルではなく DNG 本体と一緒に移動します。
  • メーカー固有の詳細情報を保持する、元の RAW ファイルからコピーされたMaker notes。

これらすべてにより、DNG は写真家が扱うファイルの中でも、個人情報が最も多く含まれるファイルの一つになり得ます。GPS 座標、カメラやレンズのシリアル番号、カメラに登録されていれば所有者名、元のファイル名、編集履歴、使用したソフトウェア名などが 1 つのファイル内にまとまってしまうからです。埋め込みプレビューにも注意してください。これは別個の画像であり、トリミング前に書き込まれている場合は、トリミング前の広い画角がそのまま表示されることがあります。

DNG を使用するタイミング

DNG はアーカイブ用途や、多数の RAW 形式ではなく 1 つの RAW 形式だけを扱いたいワークフローに向いています。RAW ファイルが持つダイナミックレンジをそのまま保持し、白飛びした空の復元やホワイトバランス補正、暗部の持ち上げなどが行えます。また仕様が公開されており、多くの場合メーカー独自の RAW より少し小さいサイズで、編集内容やキーワードを内部に保存できる自己完結型の形式です。

カメラ独自の RAW 形式と比べると、DNG への変換ではメーカー固有の追加情報が失われたり分かりにくくなったりする可能性があり、メーカー純正ソフトが変換後のファイルを受け付けない場合もあります。また、インポートのたびに変換という手順が 1 つ増えるため、カメラメーカー純正ソフトに依存している写真家は元の RAW を残しておくことがよくあります。JPG と比較すると、RAW ファイルはそのままでは使えず現像が必要で、サイズも何倍も大きくなります。そのため、DNG はネガとして保管し、共有が必要なときに JPG を書き出す運用が適しています。