EPUB ファイルは電子書籍です。名前は Electronic Publication(電子出版)の略で、この形式は出版業界団体である International Digital Publishing Forum が、以前の Open eBook 標準を基に策定し、その後 World Wide Web Consortium に統合されました。現在では、Amazon 以外のほぼすべての書店や図書館の貸出サービス、読書アプリが EPUB を扱っています。最大の特徴は「リフロー可能なテキスト」です。本には固定されたページがなく、どのページで改ページされるかは、使用している端末の画面サイズや選択したフォントサイズに基づいて、読書アプリ側で決まります。
EPUBファイルの構造
EPUB は、中身に関する一定のルールを持つ ZIP アーカイブです。拡張子を .zip に変更すれば、どの解凍アプリでも開けます。最初のエントリは mimetype という小さなファイルでなければならず、圧縮せずに保存され、その中には application/epub+zip というテキストが入っています。その隣にある META-INF/container.xml はパッケージ文書を指しており、通常は末尾が .opf の XML ファイルです。このパッケージ文書がアーカイブ全体の設計図になっており、本に含まれるすべてのファイルを列挙したマニフェストと、読む順番を示すスパインが含まれます。
各章は通常のウェブページと同じで、XHTML で書かれ、CSS で装飾され、画像・フォント・音声ファイルはそれぞれ別ファイルとして並んで格納されます。現行世代である EPUB 3 は HTML5 を基盤としています。ZIP 圧縮は可逆圧縮なので、本をまとめて圧縮しても内容が劣化することはありませんが、中の画像は元々の圧縮方式がそのまま保たれるため、JPEG の表紙画像などは非可逆のままです。多くの EPUB はリフロー対応ですが、固定レイアウト EPUB はコンテンツを特定のページサイズに固定し、これによってコミックや挿絵付き児童書が作られます。一部の書店は本に DRM をかけ、章ファイルを暗号化することで、ライセンスを持たない読者にはメタデータ程度しか見えないようにします。
EPUBに含まれるメタデータ
パッケージ文書はメタデータセクションから始まり、図書館やアーカイブで共通して使われる一般的な記述フィールドの小さな語彙である Dublin Core を利用します。レポートでは、これらは dc: というプレフィックス付きで表示されます。タイトル用の dc:title、著者用の dc:creator、編集者・翻訳者・ファイルを作成したソフトウェア名などに使われる dc:contributor、dc:language、dc:publisher、dc:date、キーワードやカテゴリ用の dc:subject、あらすじ用の dc:description、そして dc:rights です。さらに dc:identifier が本ごとの一意の ID となり、通常は ISBN か生成された UUID が使われます。
EPUB 3 では、ファイルが最後に変更された日時を記録する必須フィールド dcterms:modified が追加され、名前のソート方法や、その人物がどのような役割を担ったかを示す補足情報も加えられました。変換アプリはその上に独自の項目を書き込みます。例えば Calibre を通したファイルには、calibre:series、calibre:series_index、calibre:title_sort、calibre:timestamp、calibre:rating などが含まれていることがよくあります。
これらのフィールドの中には個人情報にあたるものもあります。著者名や協力者名が含まれるのは仕様であり、協力者の欄には、使用されたプログラム名やそのバージョンが具体的に記載されることも少なくありません。更新タイムスタンプと、ZIP が各エントリごとに保持する日付を合わせることで、その本がいつどのように組み立てられたかという履歴が分かります。表紙はアーカイブ内の別個の画像ファイルであり、写真内部に保存されるカメラ情報のブロックである EXIF データを保持しています。そこにはカメラのメーカーや機種名、撮影時刻、GPS 座標などが含まれる場合があります。また、一部の書店は購入者名や注文番号をファイル内に埋め込むウォーターマークを適用します。
EPUBを選ぶべきとき
EPUB は、手元のあらゆるデバイスで快適に読みたいテキストに向いています。明確な代替としてよく挙がるのが PDF で、その違いは固定ページかどうかです。PDF はページを完全に再現できるため、楽譜、フォーム、図表が多い資料などには適していますが、スマートフォンでは拡大やスクロールが必要になります。EPUB はそれを捨ててテキストを折り返し表示させます。Amazon の AZW3 と比べると、EPUB は対応範囲の広さで優れており、はるかに多くのデバイスやアプリで読めます。一方、Kindle ではファイルを変換する必要があり、それは自分で行うか、配信時に Amazon が行います。